リネンは民泊清掃の原価の中でも大きな割合を占めます。清掃管理SaaS「Cleaning Master」上の登録物件では平均3.24ベッド/室(編集部集計)——つまり1回の清掃で平均3セット超のリネンが動きます。一棟貸しならこれが何倍にもなり、リネンコストの設計が利益を左右します。

コストを下げる鍵は単価交渉だけでなく、在庫回転をどう設計するかにあります。本記事では計算式・具体例・運用の型まで落とし込みます。

リネン費は民泊清掃費の原価構造の6要素のひとつ。1件あたりいくらかかっているかを先に把握してから、在庫回転の改善に入ると効果が見えやすくなります。

リネンコストは「単価×ロス×滞留」で決まる

リネンの実質コストは、購入・レンタル単価だけでなく、

  • ロス(紛失・汚損・品質劣化)
  • 滞留(使われずに眠っている在庫)

の合計で決まります。単価だけ見て安いリネン屋に変えても、ロスと滞留が増えれば逆効果です。

コスト要素 典型の原因 改善の方向
単価 枚数が少なく交渉力が弱い 物件数を束ねてボリューム契約
ロス 枚数未記録・汚損の放置 物件別の持出・回収記録
滞留 戻り日数が長い・予備過多 リネン屋の回転速度で選定

必要枚数を「リードタイム」から逆算する

必要セット数は、回収→洗濯→配送の戻り日数に左右されます。戻りが遅いほど多くの予備が必要になり、滞留在庫が増えます。

基本の計算式

必要枚数 = 1日あたり清掃件数 × 1回あたりセット数 ×(回収から再使用までの日数 + 安全在庫日数)
  • 1日あたり清掃件数:繁忙日のピークで見る(平均では少なすぎる)
  • 回収から再使用までの日数:回収、洗濯、検品、再配送までにかかる日数
  • 安全在庫日数:汚損・連泊・急な追加に備える余裕(0.3〜0.5日分が目安)

計算例(編集部モデル)

条件
1日あたり清掃ピーク 20室
1回あたりのセット数 3.24(平均ベッド数)
回収から再使用までの日数 1.5日
安全在庫日数 0.5日
20 × 3.24 ×(1.5 + 0.5)= 約130セット

繁忙期(清掃ピーク120%)を見込むなら、130 × 1.2 ≒ 156セットを確保します。逆に再使用までの日数が2.5日に伸びると、必要枚数は20 × 3.24 ×(2.5 + 0.5)= 約194セットまで増えます。リネン屋選びでは、価格と同じくらい回転の速さが重要です。

1物件あたりのリネン原価イメージ

原価構造の記事と整合する目安です(地域・契約で変動します)。

物件タイプ ベッド数 1回のリネン枚数目安 1回コスト目安
1K(シングル) 1 シーツ1+タオル2=3枚前後 ¥300〜500
1LDK 2 6〜8枚 ¥600〜900
2LDK 3 9〜12枚 ¥900〜1,400
一棟貸し 5〜10 15枚〜 ¥1,500〜3,000

枚数を記録しないと「安いリネン屋に変えたのに利益が出ない」状態になりがちです。物件タイプ別の1回コストを月次で見る習慣をつけましょう。

リネン管理表に入れる項目

在庫回転を改善するには、まず「どの物件で何枚動いたか」を同じ粒度で記録します。細かすぎる表は現場で続かないため、入力項目は最小限に絞ります。

項目 目的 入力者
物件名 / 部屋番号 紛失・汚損の発生場所を追う 管理者
ベッド構成 標準枚数を決める 管理者
標準セット数 過不足の基準にする 管理者
持ち出し枚数 車載・拠点から出た枚数を記録 現場
回収枚数 戻ってきた枚数を照合 現場
汚損・破棄枚数 ロス率を出す 現場
現在庫 欠品前に気づく 管理者
発注点 追加手配の基準にする 管理者

現場に毎回入力してもらうのは、持ち出し・回収・汚損の3つで十分です。標準セット数や発注点は管理者側で先に固定しておくと、写真報告やチェックリストに1項目足すだけで運用できます。

管理表サンプル(1日分)

最初から品目別に細かく分けすぎると続きません。まずは物件単位で差分を見て、ロスが多い物件だけ品目別に深掘りします。

日付 物件 標準セット 持ち出し 回収 汚損/破棄 差分 対応
8/17 A101 3 3 3 0 0 問題なし
8/17 B202 4 4 3 1 0 汚損写真を添付
8/17 C301 5 5 4 0 -1 次回清掃で収納内を確認

差分が出たら、当日中に「物件内に残っている」「回収袋に入れ忘れ」「汚損で破棄」「ゲスト持ち帰り疑い」のどれかに分類します。分類が曖昧なまま月末を迎えると、リネン屋への請求確認も現場への改善依頼もできません。

欠品を防ぐ発注点の決め方

「なくなりそうになったら頼む」では、繁忙期に間に合いません。発注点を決めておくと、管理者の感覚に頼らず追加手配できます。

発注点 = 1日平均使用枚数 × 補充リードタイム + 安全在庫

たとえば1日平均65枚使い、リネン屋の補充に2日かかり、安全在庫を30枚持つなら、65 × 2 + 30 = 160枚を下回った時点で追加手配します。

発注点は月1回見直します。稼働率が上がった、物件タイプが大型化した、戻り日数が伸びた、汚損が増えた——このどれかが起きたら、必要枚数も発注点も上げるべきサインです。

週次棚卸しで見る3つの在庫

発注点を運用するには、在庫を「全部で何枚あるか」ではなく、今すぐ使える枚数で見ます。清掃当日に使えないリネンを在庫に含めると、数字上は足りているのに現場で欠品します。

在庫区分 含めるもの 判断
使用可能在庫 拠点・車載・物件内にあり、検品済みで次回使えるもの 発注点判定に含める
戻り待ち在庫 リネン屋へ回収済み、洗濯中、配送待ちのもの 戻り日が確定していれば予定在庫として見る
使用不可在庫 汚損確認待ち、破棄予定、枚数不明の袋 発注点判定から除外

週次棚卸しでは、使用可能在庫が発注点を下回った品目だけをリスト化します。全品目を毎回議論するのではなく、「今週欠品しそうなもの」に絞ると、管理者の確認時間を短縮できます。

欠品直前の臨時対応ルール

欠品が起きそうな時ほど、現場判断でバラバラに動くとロスが増えます。臨時対応は事前に優先順位を決めておきます。

優先順位 対応 使う場面 注意点
1 リネン屋へ前倒し配送を依頼 戻り待ち在庫があり、配送だけ早めれば間に合う 追加配送費を記録する
2 近隣物件・拠点から横持ち 同一エリアで余剰がある 持ち出し元の次回清掃を欠品させない
3 サブ業者へスポット発注 繁忙期でメイン業者が詰まっている 品質・サイズ違いを写真で確認する
4 予備セットを開封 チェックイン直前で代替がない 開封後に必ず発注点を上げる

臨時対応をした日は、通常のリネン原価とは分けて「欠品回避コスト」として記録します。前倒し配送やスポット発注が月に何度も出るなら、単価交渉より先に必要枚数・戻り日数・発注点のどれかを見直すべきです。

外注 vs 自社管理の判断基準

外注(リネン屋) 自社洗濯+保管
向いている規模 〜月80件程度 月100件超・エリア集中
メリット 初期投資不要・回転を任せられる 1枚単価を下げやすい・急な追加に強い
デメリット 戻り日数に依存・単価交渉力 設備・人・拠点が必要
在庫回転 リネン屋の能力次第 自社で短縮できる

月50件未満なら外注一択に近いです。件数が増え、配送ルートとセットで拠点を持てるタイミングで自社化を検討します。

ロスを減らす運用(3つの記録)

枚数を記録するだけで、「どこで消えているか」が見え、ロスは大きく減ります。

  1. 物件ごとの持ち出し・回収枚数(システム or 日次表)
  2. 汚損・破棄の記録(原因物件・原因工程を特定)
  3. 欠品・差し替え回数(リネン屋 or 自社洗濯の品質指標)

チェックリスト運用と同じく、現場が入力する項目は3つ以内に絞ると続きます。「枚数確認」1項目を完了条件に含めるだけでも、ロス率の把握は大きく進みます。

リネン屋との契約で確認すべき5点

  • 戻り日数の保証(繁忙期の例外条件も)
  • 欠品時の代替手配(何時間以内に再配送できるか)
  • 汚損・破棄の責任分界
  • 枚数単位の請求かセット単位か
  • 最低ロットと解約条件

「安い」より「欠品しない最短回転」——民泊清掃ではチェックイン前の欠品が致命傷になるため、価格交渉より先にここを固めます。

まとめ

  • リネン原価は「単価×ロス×滞留」。単価だけ見ない
  • 必要枚数は**清掃ピーク×セット数×(再使用までの日数+安全在庫)**で逆算する
  • リネン管理表は「持ち出し・回収・汚損」の3項目から始める
  • 発注点を決めると、繁忙期の欠品を感覚ではなく数字で防げる
  • 週次棚卸しでは、使用可能在庫・戻り待ち在庫・使用不可在庫を分けて見る
  • 欠品直前の臨時対応は、前倒し配送・横持ち・スポット発注・予備開封の順に決めておく
  • 月100件超・エリア集中なら自社洗濯も選択肢
  • リネン屋選びは回転速度が価格と同じくらい重要

リネンは「安く買う」より「上手に回す」。在庫回転とロスを数字で管理することが、結果的に最大のコスト削減になります。